第87回 京都大学丸の内セミナー



オンデマンド型電力ネットワークと電力のパケット化

平成29年10月6日(金)18:00より

岡部 寿男 (学術情報メディアセンター 教授)





家庭などで日常使っている電力は、コンセントに電化製品をつないでスイッチを入れると流れ、使い過ぎてもブレーカが落ちるまでは抑制する仕組みがない、19世紀のままの技術で供給されています。東日本大震災のあと電力需給が逼迫し、計画停電が行われたのを覚えておられると思います。供給が総量では需要の90%くらいあったにも関わらず、広範囲の地域で一斉に停電させるということが行われました。個々の家庭で見ると、呼びかけに応えて涙ぐましい節電の努力をされた方が多くいらっしゃった一方で、まったく意に介さずいつも通り電力を使おうと思えば使えてしまいました。これでは公平で計画的な節電は不可能です。


 これに対し、私たちは「エネルギーの情報化」を旗印に、電力を消費する機器側が事前申告した以上の電気は使わせないようにする仕組みを研究しています。消費機器側の電力要求ごとに、その要求が満たされなかった場合の生活の質(Quality of Life)の低下を考慮し、優先順位をつけます。また電源の側も、電力会社からの安定した系統電力と、太陽光発電など安定度は低いが環境負荷が小さい電力とを区別します。その上で、電源と電力消費機器とをつなぐ網目状のネットワークを考えて、生活の質の低下を一定以下に抑えつつ電力消費やCO2排出を最小化する供給と需要の最適マッチングを計算して電力を供給します。これが、私たちが提唱するオンデマンド型電力ネットワーク(Energy on Demand)です(図1,図2)。





図1.オンデマンド型電力ネットワーク




図2.プロアクティブ制御によるきめ細かな電力制御




 そのような、従来と比べて自由度の高い電力供給を実現するために、電力をパケットにして送ることを研究しています。実は私自身はコンピュータネットワークが専門で、電力についてはほとんど素人ですが、通信の世界において、アナログからデジタルへ、そしてパケットへの進化が、インターネットの普及に至る革命を支えてきたのと、そしてその礎には半導体技術の飛躍的進歩があったのをずっと見てきました。それと同様の考え方で、SiC(シリコンカーバイト、炭化ケイ素)の半導体を用いた電力パケットルータを実装しています(図3,図4)。








図3.電力パケットルータの構成








図3.電力パケットルータ試作



 今日のインターネットで使われている技術の基礎が開発されてから普及して誰もが当たり前に使うようになるまでに30年以上かかりました。私たちが研究中の技術もすぐに世の中に展開できるものではありませんが、情報通信技術の力でいずれはエネルギーの世界にも大きな変革をもたらしたいと考えています。






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