第89回 京都大学丸の内セミナー



森林と草原のモザイク地帯にすむボノボ

平成29年12月1日(金)18:00より

伊谷 原一 (野生動物研究センター 教授)





アフリカ大型類人猿の1種であるボノボ (Pan panisucus) は、アフリカ中央部の大国・コンゴ民主共和国にのみ生息する固有種で、絶滅の危機に瀕している希少種でもある。野生ボノボの本格的なフィールド研究は1973年、日本の研究者によって着手された。そのフィールドは同国・赤道州のほぼ中央に位置するワンバ村(現、ルオー学術保護区)で、そこでの研究は内戦等による空白期間があったものの、45年近く経ったいまも継続されており、これまでにボノボのユニークな特性が明らかにされている。


2006年、コンゴ熱帯多雨林の南西限界域で、ボノボのまとまった個体群の生存が確認された。これまでボノボは純粋な熱帯森林居住者だと考えられてきたが、新たに発見された地域の一つ、バリ川流域は熱帯多雨林の辺縁部で、森林と湿性草原がモザイク状に布置する植生環境である。私たちはバリ川流域でのボノボの調査を2013年から継続しており、少なくとも2集団については人付けも進みつつある。この地域のボノボたちは森林内を遊動しているだけでなく、採食や休息、森林間の移動のために草原も頻繁に利用している。バリ川流域にすむボノボたちが、どのようにオープンランドに適応しているかを探ることは生態学的に興味深いテーマである。また、これまでに熱帯多雨林のボノボ研究で集積された資料と比較することで、行動学的、社会学的にも新たな知見をもたらし、人類の進化過程を考察する上で貴重な情報を提供することが期待される。






ボノボの長期フィールド・ワンバ(青)と新しいフィールド・バリ(赤)








ボノボ本来の生息環境と考えられていた熱帯多雨林。








バリ川流域の森林と草原のモザイク地帯。








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