第132回 京都大学丸の内セミナー
(現地/オンライン)

第132京都大学丸の内セミナー

水素と水と地球の46億年の物質学

令和日(金)18:00 ~19:30

 奥地 拓生(複合原子力科学研究所 教授)

 地球のことをよく水の惑星といいます。確かに地球の長い歴史において、液体の水は特別な役割を果たしてきました。この水の大部分は海にあって表面を覆っているので、たくさんあるようにも見えますが、重さでは全地球に対してわずか一万分の二の比率に過ぎません。一方で惑星探査機の活躍によって、地球外の太陽系物質の中には、これよりも何桁も多くの水を作り出せる量の水素があることが確実になりました。つまり水の惑星は水に全く恵まれていないようです。これはなぜなのでしょうか?

 ここで地球の本当の主役である鉱物に注目します。鉱物は海底の下をおおいつくす岩石の素材です。私たちは実験室で地下の高温超高圧の条件を再現することを通して、そこにある多種多様な鉱物を人工的に作り出してきました。さらにこれらの鉱物を、やはり人工的につくる粒子である中性子を使って詳しく調べてきました。その結果、地球の有する水素の大部分は鉱物に溶けこんで地下を深く広く循環しており、水の惑星の歴史をつくる重要な役割を果たしつつも、表からは見えていないことがわかりました。このように鉱物と中性子をつくって組み合わせることでわかってきた、水素と水と地球の歴史の不思議な関係を紹介します。