第138回 京都大学丸の内セミナー
(現地/オンライン)

第138京都大学丸の内セミナー

iPS細胞で立ち向かう呼吸器の難病

令和日(金)18:00 ~19:30

 後藤 慎平(iPS細胞研究所・教授)

 高齢化を迎えた現代社会において呼吸器は、COVID-19等の感染症、がん、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息など様々な疾患の責任となる臓器です。特に難治性とされる呼吸器疾患の医療は治療手段の需要と供給の釣り合わない分野とされ、常に技術革新が期待されてきました。疾患モデルは治療手段の開発や臨床現場で役立つバイオマーカーを発見するために欠かせませんが、マウスを用いた従来の疾患モデルは有用な一方で、ヒトとの違いもあって限界もありました。近年は世界中でヒト由来細胞を用いた疾患モデル開発への期待が高まっています。iPS細胞は分化誘導することにより、これまで入手に限界のあった患者さん由来の細胞を「作る」ことのできる細胞供給源としての役割を担っています。希少疾患であったり重症の患者さんでも、末梢血からiPS細胞を樹立しておけば、患者さん由来の呼吸器細胞を「作る」ことが可能なため、私はiPS細胞を用いて疾患モデルの開発に取り組んできました。私はこの国で始まったiPS細胞の技術を呼吸器の臨床現場まで届けたいという思いもあり、これまでの研究成果を共有して、今後の方向性についても話題を提供したいと思います。