未踏科学研究ユニット意見交換会2017

意見交換会

Add Headings and they will appear in your table of contents.

2018年1月27日(土)に学術情報メディアセンター南館において研究連携基盤未踏科学研究ユニットの意見交換会2017を開催しました。参加者は、未踏ユニットメンバーと研究連携基盤運営委員会メンバーです。

小柳基盤長の挨拶のあと、各未踏科学研究ユニットの活動報告とそれに対する討論会を行いました。

まず「未来創成学国際研究ユニット」の佐々木ユニット長・基礎物理学研究所教授と村瀬同研究所准教授がユニットの活動報告を行いました。本ユニットの目標は、俯瞰的学問体系として「未来創生学」を構築することです。その足がかりとして「analogy」と「fractal principle」をもちいて、現実社会に生じる「進化現象」そしてそれから生まれる「創発」が生じる過程を理論化しようとする試みです。その研究対象を宇宙、地球、生命現象から人間社会にも広げるというきわめて挑戦的な研究です。それゆえに報告後の討論はたいへん熱を帯びました。熱力学におけるエントロピー増大則と宇宙の進化との関連が議論されました。また創発の理論化については、なかなか難しいので今後の検討が必要であると会場からコメントがありました。


次に、「ヒトと自然の連鎖生命科学研究ユニット」の平井霊長類研究所教授がヒト以外のヒト科動物(チンパンジー属とゴリラ属)の染色体テロメアの周辺に見つかるリピート配列の特性ならびにヨザル種にみつかったハイブリット個体の染色体変異機序ならびに新たに派生した反復配列による夜行性への戻り進化について、小柳ウイルス・再生医科学研究所教授がエイズウイルスであるHIVの起源とそれに抑制活性を発揮するヒト細胞内のタンパク質の遺伝子多型に関する研究内容を紹介しました。われわれヒトとその近縁種の細胞とウイルスのゲノム解析の結果、生物ゲノムの遺伝子変化(とくにハイブリッド)は常に生じていること、一方、生物進化という結果に至るのは連続的な場合と不連続な場合がそれぞれあること、しかしながら、ウイルスの場合はきわめて早いスピードで遺伝子が変化し、かつランダムな変異があることが強調されました。討論では、ウイルスなどの世界中に存在する遺伝子の変化の早い生命が、われわれの文化に与えた影響はないのかという質問が出て、この視点も重要と認識されました。


最後に「グローバル生存基盤展開ユニット」の梅澤ユニット長・生存圏研究所教授が、前身の「生存基盤科学研究ユニット」の学際的研究体制から現在の7つの研究所センターの課題解決型協同研究と個別研究の深化について、活動状況の説明がありました。本ユニットは「バイオマス生産」「プラズマ利用」「生活圏の確立」の3つの柱から成り立っており、それぞれのロードマップが紹介されました。バイオマスについてはこれまでのバイオマスを作るだけでなく再生エネルギーとの連関、プラズマ利用についてはプラズマエネルギーの制御法など、生活圏の確立については東南アジアの熱帯林資源の開発による荒廃泥炭地の回復法の開発などが紹介されました。社会実装をめざして、多くのテーマをかかえている研究チームであるために、運営体制に質問がありました。この研究ユニットは物理、化学、医学、そして社会学というそれぞれ異なる階層性に富んだ研究チームであることより、包括する範囲がきわめて広いという特徴があります。この点が長所であるとともに研究の先鋭性がわかりづらくなっているとの意見もありました。


その後、全ユニットの活動について総合的な観点から意見交換を行い、閉会しました。

集合写真を添付します。


★  ★  ★  ★  ★


「学知創生ユニット」は当日、原ユニット長・東南アジア地域研究研究所教授が所用のために出席できなかったので、後日下記のように活動報告をされました。


「学知創生ユニット」では,①学術データベース構築(Myデータベース),②学術データ連係(資源共有化システム),③学術データ応用(HuMaP,HuTime等の時空間情報処理ツール)を支援する情報ツール群を,「学知創生プラットフォーム」として運用しています。「学知創生ユニットサブユニット」の研究課題は,従来の「学知創生プラットフォーム」をLinked Open Data(LOD)環境へ対応させるために,特に①と②について,セマンティックWebの主要技術であるRDF(Resource Description Framework)を利用した情報ツールとして再構築することです。①については再構築が終了し,2018年度の学内公開を目指して準備を進めています。②については多層プラットフォームシステムとしての再構築を進めています。このうち,RDFデータを蓄積する「オープンデータプラットフォーム」は構築が終了し,既存データの移行と,それらを用いた運用試験において有用性を確認しました。現在,データの意味的連携を実現するための「データ連係プラットフォーム」を構築中であり,これによる2018年中に本情報資源の共有化機能の実装を目指しています。この新しい「学知創生プラットフォーム」を学内に提供するために,アカデミックデータ・イノベーションユニット(学際融合教育研究推進センター)との連携を進めているところです。一方,多言語・多分野のデータの高度利用を実現するには,人工知能等を駆使した高度情報処理が必要であり,そのためには,デジタルデータやメタデータの構造や意味(メタデータスキーマ)をコンピュータが解釈可能な知識としてネット上で共有する機能が不可欠であることが,研究過程で明らかになりました。しかし,本情報基盤を含めて多くの学術リポジトリにはメタデータスキーマが保存されていません。例えば,データ項目が「血糖値」でデータ型が「実数」と定義されていても,単位・計測法・採血環境等が不明であれば将来の研究には利用できません。そこで2017年度より,デジタルデータの長期保存・利活用を目指したメタデータスキーマ・データベースの研究を開始しました。その初年度として,デジタルデータの長期保存に関する国際カンファレンスを本学に招致・開催(iPRES2017:https://ipres2017.jp)しました(参加者197名:日本人65名,海外132名)。この研究分野は未踏領域であり,また日本は欧米の後塵を拝していることから,本ユニットの成果はブレークスルーになると期待しています。


「人間の安全保障に関するトランスボーダーサブユニット」については,特にエネルギー分野におけるシミュレーションを主体とした研究等が特筆されます。さらに,機械学習や自然言語処理技術を駆使して,ネットワーク上のビッグデータから地域の変動情報を自動抽出して可視化する試みを開始しました。2017年度は日本語新聞データを対象としたプロトタイピングを行いました。2018年度は英語等への適用を目指しています。これらの成果と学知創生プラットフォームの構築を受けて,データベースと数量的解析を組み合わせた人文社会科学研究の可能性についての検討を開始しました。