第139回 京都大学丸の内セミナー
(現地/オンライン)
第139回 京都大学丸の内セミナー
自然生態系の中の寄生生物:その驚くべき進化と生態系プロセスへの役割
自然生態系の中の寄生生物:その驚くべき進化と生態系プロセスへの役割
令和6年4月12日(金)18:00 ~19:30
佐藤 拓哉(生態学研究センター・准教授)
今日地球上に生息する生物種の約40%は寄生生物であり、すべての野生動物は少なくとも一種の寄生生物に寄生されていると言われています。こうした寄生生物の中には、自らの利益(感染率向上)のために、宿主個体の行動や形態を改変―宿主操作―する種が多数存在します。宿主操作は、ある生物個体の遺伝子が、他の生物個体の表現型として表出される「延長された表現型:Extended Phenotype」の好例であるとして、多くの生物学者を魅了してきました。しかし、寄生生物による延長された表現型の仕組みや自然生態系での役割は謎に包まれています。
宿主操作の代表例として、寄生生物のハリガネムシ類は、森林や草原で暮らす宿主(カマキリや直翅類等)の体内で成虫になると、自らが繁殖をする水辺に戻るために、宿主を操って入水させてしまいます。秋口に、水辺をふらふらと歩くカマキリが不意に水に飛び込む瞬間を見たことのある方もおられるのではないでしょうか?本セミナーでは、ハリガネムシ類がどのような仕組みで宿主を水に飛び込ませるのか?この恐怖の宿主が自然界で果たす役割は何なのか?について我々の研究から分かってきたことをご紹介します。
ハリガネムシ写真
偏光走性の強化
生態系での役割