第142回 京都大学丸の内セミナー
(現地/オンライン)

ボルネオ島でテングザル研究:フィールド研究の魅力と可能性

令和10日(金)18:00 ~19:30

 松田 一希(野生動物研究センター・教授)

熱帯の森を歩いたことがない人にとって熱帯雨林は、暑くてジメジメして、蚊、ダニ、ヒルの猛攻撃に加えて、猛獣がうろつく恐ろしい場所を想像するかもしれません。都会の生活に慣れた人間にとっては、確かに辛い環境です。四季に恵まれた温帯のほうが、よほど住みやすいと思うかもしれません。しかし熱帯雨林は、世界中の生物の50-80%が生息する、生物多様性のホットスポットです。食物が枯渇し、凍死の危険におびえる冬はありません。一年中、森のどこかで植物は果物を実らせ、そして若葉が芽吹く。動植物の息づく多様な森に魅了され、私は毎年のように東南アジアのボルネオ島の熱帯雨林に通っています。天狗のような鼻を持つテングザルを主に研究しています。300種以上の霊長類の中で、こんな奇妙な進化をとげたサルは他にはいません。誰もが思う「なぜあんな鼻を・・・・」の謎。その謎解きに夢中なのです。本講演では、コストパフォーマンス(コスパ)の対極に位置するような、泥臭いフィールドワークだからこその新発見の数々、そしてフィールド研究の魅力や可能性についてお話しします。