91回京都大学丸の内セミナー

ナノサイズのフラスコを創ってみよう!

平成30日(金) 1800より

村田靖次郎 (化学研究所 教授)

通常有機化学反応は、ガラスや金属製の容器中、液体の溶媒に基質と試薬を混合することによって行われます。このようなフラスコ中には、アボドガロ数程度の数の複数種類の分子が混在しており、それぞれの分子は頻繁に衝突し、お互いに相互作用しています。このような複雑な状況の下、狙った化学反応を選択的に進行させることが、有機化学の目的の一つです。

 しかし、その分子間の相互作用は必ずしも明らかとはなっていません。単分子の挙動を研究するためには高真空条件がしばしば用いられますが、このような条件下(10-10 Torr, 22.4 mL)でさえ、6億個の気体分子が存在しており、分子間の相互作用を完全に解明することは困難です。

 今回のセミナーでは、ナノメートルサイズのフラスコを創り、その中に1つあるいは2つの化学種を閉じ込める研究について紹介します。私達は、このアプ ローチにより、これまで知られていなかった分子科学における学理を明らかにす ることを目指しています。