9回品川セミナー

「多能性幹細胞株 (ES/iPS細胞株)
の限りない能力と医学/創薬研究への応用」    

共催:日本学術会議サイエンスカフェ

平成2日(金) 17:30より

中辻憲夫(物質−細胞統合システム拠点長/再生医科学研究所教授)   

2007年に発足した物質―細胞統合システム拠点では、化学や物理など物質科学と細胞科学を融合した学際分野を生み出し発展させることによって、幹細胞研究の新たな展開を目指している。

 幹細胞の中でも特に注目を浴びる多能性幹細胞株(ES細胞株/iPS細胞株)は、無制限の増殖能力によって莫大な数の細胞を無尽蔵に供給する能力を持つだけでなく、体を作るすべての種類の細胞と組織に分化して作り出す多能性を持っている。従って、多能性幹細胞を未分化な状態で大量に増殖させ、必要に応じて様々な遺伝子改変を加えたのち、目的とする細胞種へと分化させ、必要な機能を果たす分化細胞を集めて、細胞治療や創薬スクリーニングなどの用途に活用できる。

 創薬研究においては、様々な種類のヒト細胞を使用することが不可欠である。新薬開発や安全性試験、毒性試験などの研究材料として必要なヒト組織細胞の入手と供給には大きな制限があるが、多能性幹細胞株は大量に増殖させた後に必要とする細胞を作ることができる。さらには、特定の試験目的のために遺伝子改変を行った疾患モデル細胞などを作ることも可能である。我々は、変異遺伝子導入による神経変性疾患モデル細胞の開発、心筋分化などによる新薬候補の毒性試験系の開発に取り組んできた。

 これらの研究は、新薬の安全性を高め、実験動物の使用を減らすことに加えて、アルツハイマー病などの難病に対する新薬開発にも貢献できる可能性が大きい。