93回京都大学丸の内セミナー

繰り返しゲームの世界
:協力行動の分析

平成30日(金) 1800より

関口 格 (経済研究所 教授)

当日の公演映像

現代の経済学における標準的な分析ツールの一つに、ゲーム理論があります。これは数学の一種で、自分がやるべきことが相手のすることにも依存する「戦略的状況」の科学というべきものです。ゲーム理論の手法は、企業間競争やオークションの入札行動分析のような対立関係だけでなく、人々の間の協力行動の解明にも適用できます。

繰り返しゲームは、隣人付き合いや職場における助け合いから談合・カルテルに至るまで、様々な意味合いの協力行動を説明できるモデルです。全く協力できそうにない囚人のジレンマ的局面が何度も何度も現れるときは、いわゆるトリガー戦略で相互協力が可能になるという議論などは、繰り返しゲーム理論の成果の応用例です。

この講義では、繰り返しゲームの理論が説く相互協力の論理が、様々な局面でどのように機能するのかについて、講演者自身の研究成果も交えて解説します。具体的には、(1)単なる非協力だけではなく、悪い相手を懲らしめる行動も実行可能なケースにおける協力戦略の構造、(2)相手の行動がよく見えない状況における相互協力の達成方法、(3)当事者間の長期的関係が緊密になることが協力行動にもたらす効果、などを扱います。

 ※図は、局面に応じた様々な協力戦略の形状について、直観的に表現したものである。