第127回 京都大学丸の内セミナー
(現地/オンライン)

第127京都大学丸の内セミナー

歌うサル、しゃべるヒト

令和1月6日(金)18:00 ~19:30

 西村剛ヒト行動進化研究センター・准教授

私たちヒトの話しことばの進化について、サル類との比較研究からわかってきたことを、お話しします。言語の起源と進化は人類進化の一大イベントです。しかし、その理解はいまだにほとんど進んでいません。言語は化石にならない。これが最大の障壁です。それゆえに、言語進化の生物学的研究では、言語を支えている数多くの生物学的特徴の一つ一つを、ヒト以外の動物と比較し、それらの系統進化プロセスを復元するという営為が積み重ねられてきました。言語は、音楽から、もしくは音楽との共通の前駆体から進化したという考えは、動物の音声コミュニケーション研究からよく支持されます。ヒトは、アイウエオといった音素の変化によって言語コミュニケーションをしますが、サル類は、音声の大きさや長さ、高さ、声質など、音楽的要素の変化によってコミュニケーションをしています。私たちの研究グループでは、ヒトに系統的に最も近いサル類を対象に、音声を作る身体の解剖学的特徴やその運動の生体機構に関する研究を行ってきました。それらの成果を織り交ぜながら、ヒトの話しことばの特性と、それがどのように進化してきたのかについてお話します。