我が国に全国規模のGNSS(GPS)観測網の整備が開始されたのは1994年である。これ以降、日本列島の地殻変動、すなわち日本列島の形が現在どのように変わりつつあるのかを高精度に観測できるようになった。西南日本(図1)においては、南海トラフから沈み込むフィリピン海プレートの影響を受けて、四国や紀伊半島が北西向きに変動しているが、内陸域にはフィリピン海プレートの影響だけでは説明できない変動が見られ、特に九州の地殻変動は複雑である。内陸域の地殻変動が集中している場所は、ひずみ集中帯と呼ばれ、近年の内陸地震の多くは、ひずみ集中帯に発生している。ひずみ集中帯の場所は、概ね活断層が多く分布する地域と対応しているが、顕著な活断層が見つかっていない地域にも、ひずみ集中帯は存在する。
2016年4月14日及び16日に熊本県で震度7を記録する地震(2016年熊本地震)が発生し、これらの地震は布田川断層と日奈久断層という活断層帯で発生した。一方、これらの地震は地殻変動の観点から見ても顕著なひずみ集中帯で発生したという点で興味深い。本講演では、GNSS観測データが明らかにした西南日本の地殻変動やひずみ集中帯の分布、2016年熊本地震の最新の解析結果について報告する。