第74回京都大学丸の内セミナー

西南日本の地殻変動と2016年熊本地震

平成28日(金) 1800より

西村 卓也(防災研究所 准教授)

当日の講演映像

我が国に全国規模のGNSS(GPS)観測網の整備が開始されたのは1994年である。これ以降、日本列島の地殻変動、すなわち日本列島の形が現在どのように変わりつつあるのかを高精度に観測できるようになった。西南日本(図1)においては、南海トラフから沈み込むフィリピン海プレートの影響を受けて、四国や紀伊半島が北西向きに変動しているが、内陸域にはフィリピン海プレートの影響だけでは説明できない変動が見られ、特に九州の地殻変動は複雑である。内陸域の地殻変動が集中している場所は、ひずみ集中帯と呼ばれ、近年の内陸地震の多くは、ひずみ集中帯に発生している。ひずみ集中帯の場所は、概ね活断層が多く分布する地域と対応しているが、顕著な活断層が見つかっていない地域にも、ひずみ集中帯は存在する。

図1.GNSS(GPS)観測による西南日本の水平変動速度ベクトル.矢印は、兵庫県宍粟市の観測点(図中Ref.と表示)に対する各観測点の変動方向と速度を示す。観測期間は2005年4月-2009年12月.破線は南海トラフの位置を示す。

2016年4月14日及び16日に熊本県で震度7を記録する地震(2016年熊本地震)が発生し、これらの地震は布田川断層と日奈久断層という活断層帯で発生した。一方、これらの地震は地殻変動の観点から見ても顕著なひずみ集中帯で発生したという点で興味深い。本講演では、GNSS観測データが明らかにした西南日本の地殻変動やひずみ集中帯の分布、2016年熊本地震の最新の解析結果について報告する。 

図2.2016年熊本地震の地表地震断層によってずれたブロック塀(熊本県御船町)