82回京都大学丸の内セミナー

iPS細胞を使った関節・軟骨再生研究

平成2912日(金) 1800より

妻木 範行(iPS細胞研究所 教授)

軟骨は関節において骨の表面を覆い、滑らかな関節運動に欠かせません。怪我をして膝や肘の軟骨が欠けると、痛くて曲げにくくなります。そして、欠けた軟骨は放っておいても治らず、その関節を使い続けると、どんどん悪くなります。欠けた軟骨を治すことは難しいですが、再生治療の技術を使って治そうという試みが行われています。その一つとして、私たちは、iPS細胞から軟骨を作って、患者さんの関節の軟骨が欠けた所に移植することによって治そうとする研究を行っています。人工多能性幹細胞(iPS細胞)は京都大学の山中先生らが10年前に開発した細胞で、いくらでも増やせて、体のあらゆるタイプの細胞になれるという性質をもち、再生治療への応用が期待されています。私たちは、このiPS細胞を軟骨細胞へ変え、そこからさらに軟骨組織を作る方法を開発してきました。そして、iPS細胞から作った軟骨組織の安全性と有効性を慎重に調べて、将来的には関節軟骨が欠けた患者さんの治療に役立つことをめざしており、その紹介をさせて頂きます。