第116回 京都大学丸の内セミナー

歴史的転換期に入ったエネルギー問題
―  物質エネルギー循環システムの新しいパラダイム  ―

令和25日(金)18:00~19:

小西哲之(エネルギー理工学研究所 教授)

 人類が生きていくためにはエネルギーが不可欠ですが、その供給と利用の仕方が、今大きく変わっています。パリ協定により現在の国際合意となった二酸化炭素削減目標は、2040年台には人類が許容されるCO2排出量、つまり「カーボンバジェット」を使い切ることを示しています。これまでは、枯渇することが心配されていた石油などの化石資源は、一転して燃やせない、という環境問題が先に制約となり、大量に残ったまま使えなくなるのです。このため、人類の富として資源に投資した大きな部分が「座礁資産化」してdivestmentといわれる新しい流れが進んでいます。今、人類社会では、資源消費型の化石エネルギーに依存した産業革命以降の高度成長とは異なる、新しい物質エネルギーシステムへのパラダイムシフトが起こっているのです。 講演者は、異なる分野の研究者と協力しながら、バイオマス生産と先進エネルギーによるCO2固定システムを提案しています。これは、バイオマス生産によるCO2吸収と、炭化による隔離による環境容量の創出を目指すもので、これまで言われている排出削減とは根本的に異なるものです。荒れ地を高生産性の植物で緑化し、二酸化炭素を吸収する一方、先進技術によるエネルギーでそれを固定します。大気中二酸化炭素濃度を積極的能動的に低下させる一方、炭素排出国から発展途上国へのマネーフローを発生させることができるため、SDGs目標の多くを満たす解決策になります。様々なスケールで、自立した新たなコミュニティ結合型にの物質エネルギーサイクルを構成し、強靭なサプライチェーンを構成します。いろいろな意味で、産業革命以来の人類と環境の問題を逆転しようとする試みに、京大の異分野融合の連携研究で挑戦しています。この講演では、人類の長期的に持続可能な、新しい社会のあり方を展望したいと思います。