第129回 京都大学丸の内セミナー
(現地/オンライン)

第129京都大学丸の内セミナー

エキゾチックな原子核を造る・観る

令和10日(金)18:00 ~19:30

 塚田 暁化学研究所准教授

 原子核は原子の中心に存在し、陽子と中性子という二種類の粒子で構成される。そのサイズは原子の約10万分の1と非常に小さく、原子核は孤立した有限多体系と捉えることができる。原子核には、それを形作る核力の多様性のもと、多彩な構造や現象が現れる。20世紀が終わる頃、不安定核と呼ばれる、陽子の数と中性子の数が大きく偏った寿命の短い原子核をビームとして生成する技術が確立した。この技術革新を背景に、原子核のエキゾチックな性質が次々と発見され始めた。不安定核領域の原子核の性質は原子核構造理論の推進にとどまらず、例えば宇宙における元素合成過程の理解においても重要であり、現在世界中で活発な研究が行われている。

 本講演では原子核に関する初歩的な導入から始めて、現在の不安定核研究の背景と、その中で我々が研究・開発を進めている①電子ビームによる不安定核捕獲技術を用いた核構造研究および②希少不安定核リサイクルリングについて紹介したい。さらに将来構想として①と②の融合による、安定の島と呼ばれる人類未踏の超重領域での存在が理論的に予言されている原子核群へのアプローチの可能性についても紹介する。

陽子の数と中性子の数で原子核を分類した核図表