第150回 京都大学丸の内セミナー
令和8年2月6日(金)18:00 ~19:30
日野正裕(複合原子力科学研究所・教授)
中性子は私達の体をはじめ、物質の中で安定して存在しています。しかし原子核から飛び出すと、自由な中性子は約15分の寿命で崩壊します。15分も寿命があるので、中性子をビームとして利用することも容易で、生命・物質科学研究を中心とした学術・産業利用研究においても重要なツールとなっています。また自由な中性子の寿命は私達の宇宙の成り立ちに関する重要なパラメータで、中性子それ自体の研究も盛んです。これらの研究の実現は、それぞれ専用の実験装置が必要ですが、電気的に中性な中性子ビームは制御(曲げる)ことが大変難しいです。しかし中性子の速度が遅くなれば「波」としての性質が顕著になる中性子の光学的性質を活かせば、中性子を反射できるミラー(鏡)が出来ます。中性子の反射が量子力学の基礎で正確に説明できること、中性子スーパーミラー等の多層膜中性子ミラーの応用例等を解説します。
京都大学の研究用原子炉KURは2026年5月で停止しますが、現在、日本原子力研究開発機構、京都大学、福井大学が中核的機関となって、福井県敦賀市「もんじゅ」サイトで新たな研究用原子炉建設計画が進んでいます。京都大学は、幅広い利用を目指した実験装置の取りまとめをしており、中性子スーパーミラーをはじめとする中性子光学デバイスは中性子ビーム利用装置の最重要要素の一つです。中性子光学を利用した新試験研究炉へ向けた研究開発の広がりをご紹介します。
中性子スーパーミラーの構造と中性子反射
新しい試験研究炉が拓く未来イメージ図
「もんじゅ」サイト新試験研究炉イメージ図