第148回 京都大学丸の内セミナー
令和7年10月10日(金)18:00 ~19:30
永樂 元次(医生物学研究所・教授)
イモリなどの一部の両生類では心臓などの重要な臓器が失われても再生することはよく知られていますが、ヒトでは再生できるのは爪や毛、皮膚などの一部の組織に限られます。近年の研究で、再生できる生物では臓器が失われた時に特殊な幹細胞が反応して臓器を再建できるようなプログラムが存在しているのに対して、再生できない生物ではそのような幹細胞が存在しないことがわかってきています。一方でiPS細胞に代表される高い分化能(色々な細胞になれる能力)を持つ多能性幹細胞を用いて臓器を再生しようとする試みもされています。網膜や肝臓、膵臓などの臓器についてはこの10年ほどで実際に移植治療の臨床研究に着手されるほどに研究が進んできました。本講座では臓器再生の仕組みの説明から始めて、ヒトでの臓器再生を目指してどのような取り組みが行われているかを我々の研究を交えて紹介すると同時に、今後の臓器再生技術の展望について考えてみたいと思います。